ですが、1つお伝えしたいことがあります。 私は、オフィスのデスクにノートパソコンを置いてこの文章を書いています。 全く新しいことはありません。 そこで、現時点で断言できることがあります。それは、人が書き物をする限り、今後何年にもわたり、デスクが使用されるだろうということです。 ソファで書き物がうまくいくケースは、私にとってはほとんどありません。
たとえ、未来のオフィスワーカーがスキーリフトのようなチェアに座ったり、足繁く禅ガーデンを散策したりするとしても、勤務中のある時点で彼らは、デスクに戻って仕事をすることでしょう。 立って働くことを選ぶオフィスワーカーもいるかもしれません。 つまり、やや刺激的な書き出しでしたが、私の結論はこうです。 デスクは徐々に進化しており、同時に、その使い方も変化している、ということ。 デスクデザインが変わっただけでなく、その機能も変化しました。 技術革新により、私たちの働き方にデスクやその機能が寄り添って適応してきたのです。 動物の世界なら、この適応能力が生存率に直結すると言えるでしょう。
近年、私たちの働き方は急速に変化しています。
一定の場所で働くような働き方は減り、今後も衰退の一途をたどることでしょう。 人は自宅や移動中の電車、庭など、どこでも働くことができます。 デスクよりもミーティングに多くの時間を費やしています。 そして、同僚とは「サクッと」話したいと思っています。 さて、ここで再考してみましょう。それでもデスクは必要でしょうか?それとも、不要の産物でしょうか?
私の意見では、デスクはオフィスの欠かせない一部であり続けると考えます。 しかし、これはデスクが今のままで通りあり続けるという意味ではありません。 むしろ、 オフィスとデスクはこれまで同様、変わり続けていくでしょう。
変化には2つの要素があることを念頭に置く必要があります。 1つは、職場における組織的な変化であり、もう 1 つはテクノロジーの変化で、これも最終的には組織的な変化につながっています。 私たちは理念からぶれてはなりません: 求められていることと技術革新に応じて、ツールを変化させること。
歴史を振り返る
歴史を振り返ってみましょう。人々が書類を処理し、業務を管理した場所が、後にオフィスと呼ばれるようになりました。 これらの部屋に置かれる家具は、組織や技術革新の変化に応じて絶えず進化してきました。 大きな変化の1つは、デジタル化の到来でした。
コンピューターがオフィスに導入されたのです。 会計部や秘書部だけでなく、企画部や設計部にも、コンピューターが入ってきました。 設計技師は大きな製図台(ドラフター)の代わりに、CAD ソフトウェアを使用するようになりました。 建築家、デザイナー、製図作成者は、定規や鉛筆、コンパスに代わり、コンピューターやマウス、そしてキーボードを使用しています。 高さ調整可能な電動昇降デスクの開発を促したのも彼らでした。 製図作成者や技師が立ったり座ったりして製図をほぼ垂直の状態にして検討できるよう、製図台は座位と立位の両方で作業できるようになりました。 立位での作業は、 コンピューター導入後も、採用されないわけはないですよね?
ですから、昇降デスクを導入し始めたのが設計技師であったのは当然の流れでした。 1990年代初頭には、高さを手動で調節できる CAD デスクがありました。 1910年まで遡ると、ドイツのReiss社が初めて昇降デスクを発売しました。 もちろん、当時の CAD 作業台同様、この昇降デスクもボタン1つで高さを調節するものではありませんでした。
1990年代に入り、LINAKは、デスク向けの電動高さ調節ソリューションを初めて開発しました。 LINAKは1998年、電動昇降オフィスデスク向けのシステムで、世界初となる電動昇降装置 DL1を発売しました。
イノベーションにはしっかりとした土台が不可欠
世界初の昇降デスクの発売以後、世界中で需要が天井知らずに増えたと想像した人もいるかも知れません。 現実は全く違いました。 作業中に立位と座位を交互に繰り返すことで腰への負担を軽減し、健康を促進することがブームとなったのは、北欧諸国のみでした。 この地域では、オフィスでの電動昇降デスク導入率は2005年には9割以上に達していました。
一方、ドイツをはじめとする他のヨーロッパ諸国では、電動昇降デスクを導入し、人間工学に基づいた健康的な職場をオフィスワーカーに提供することには当時、まだ抵抗がありました。 立位と座位を交互に繰り返して作業することのメリットを意思決定者に納得していただくには多くの時間と労力がかかりました。 徐々に受け入れられ、ゆっくりと需要が増加していきました。 需要の高まりに伴い価格が下がり、電動昇降デスクはさらに浸透しました。 IBAが2019年から2020年にかけて実施したオフィスワークの変化の実態に関する調査により、2019年時点で、ドイツで昇降デスクを使用しているのは、全オフィスワーカーの28%にのぼることがわかりました。 IBA発行の調査結果(ドイツ語のみ)はこちらからダウンロードできます。
長い時間をかけて、昇降デスクの技術は着実に進化してきました。 電動アクチュエータ システム テクノロジーは当初、上下動作のみが可能でした。 LINAK のアクチュエータ システムは初期段階から、完全同期運転、挟み込み防止機能 、省エネなど、よりインテリジェントな制御機能を搭載していました。 インテリジェントなシステムは、よりイノベーティブに進歩しています。 ここで重要になるのは、インテリジェントな予約システムとの統合と個性化です。
未来に備える
さらなる柔軟性: デスクは進化し続け、より多くの機能を備えていくでしょう。 オフィスの変化に合わせて変化していきます。 ここで鍵となるのは柔軟性です。 新型コロナウイルスの世界的大流行の状況下、直近2、3ヶ月でこの変化が加速されました。 各従業員に個別デスクが必要ですか? activity-based workingにより、オフィスを最適化し、省スペース化・省リソース化を図ることはできないでしょうか? 現在ある姿に比べ、ワークスペースは、もっと独立するのでしょうか?
1つ明確なことがあります。それは、昇降デスクは特別なものではなく、当たり前なものとなるということです。 そして、リモートワークを選択し、プライベートな空間をオフィスとして利用する人が増えるということです。 マンションやアパートでスペースにゆとりがない場合はどうしているかと言いますと、 多くの人がキッチンテーブルやリビングルームの隅、ベッドルームをワークスペースにしています。 これはオフィス家具メーカーにとっては課題となっています。 広げればダイニングテーブルとしても使えたり、ボタンを押すだけで壁に収納できたりする多機能デスクを設計する必要があるかもしれません。 極めてフレキシブル、そして賢いものです。
「デスクは進化し続け、より多くの機能を備えていくでしょう。 オフィスの変化に合わせて変化し、デジタルネットワーク化が進んでいくでしょう。」
近年、デジタル化により仕事と私生活の境界が曖昧になるのを私たちは目撃してきました。 多くの人は、スマートフォンで夜間にメールをチェックするのが当たり前になっています。 ホームオフィスがワークプレイスの欠かせない一部であるという事実は、もう1つの重要なステップですが、 これは同時に、自宅とオフィスが競合し始めていることを意味します。 つまり、オフィスはより自宅の快適な雰囲気を持ち合わせ、自宅はより実用的に整理できるようにする必要があります。 その境界線は曖昧になりつつあります。
今後数年間で、オフィスはさらに変化していきます。
オフィスは自宅の快適な雰囲気を取り入れるようになってきています。 今後数年間で、その傾向は一層強まり、 ホームオフィスとの競合は激化するでしょう。 オフィスは、最適で健康的な仕事環境を提供する必要があります。
さらに、ワーカーが自宅にいるようにくつろげる空間でなければなりません。 家具はここで重要な役割を果たします。 また、職場に暮らしの文化を取り入れるのに役立ちます。 サステナブルな製造で、有害物質を使用していない新しい素材が出現するでしょう。 天板のサイズも変わると考えています。 つまり、よりコンパクトな天板がより求められるようになります。 これは、ホームオフィスのスペースが限られていることだけが利用ではありません。働き方が変わる結果でもあります。 ペーパーレス化は進むでしょう。 テーブルは、ノートパソコンやスマートフォン用のドッキングステーションを備えたワークステーションとしても活用されるようになります。
固定観念に縛られず、より柔軟に
デスクはインテリジェントになります。 そのため、未来のオフィスでは、自分専用のデスクを持つのはごく限られたワーカーだけになるでしょう。 プロジェクトに応じてチームが形成され、デスクは柔軟に活用されるようになります。
デスクやワークプレイスの予約システムが徐々に浸透し、最終的にはごく一般的なものとなるでしょう。 さらに、人工知能はオフィスでも採用されるようになります。
次のシナリオを想像してみてください。 マーケティング部で働くクリスチャンは、産業部門の営業担当者と、月曜日に2つのミーティングを予定しています。 クリスチャンは、この日に技術資料の編集も予定しています。 クリスチャンが会社に到着すると、システムにより、テクニカルサポートメンバーがいる場所のすぐ近くにある、適切なスペースが割り当てられます。 これにより、データ シートの技術的な内容について、関係者とすばやく情報交換することができます。 また、彼のいるところは、各会議室の近くです。 割り当てられたデスクは、クリスチャンの作業習慣を熟知しており、彼にとって最適な座位と立位の高さに自動的に調節し、定期的に立位を促します。 クリスチャンはこの情報をプロフィールに設定していました。 また、就業時間の終わりには、簡単に消毒・清掃できるよう、デスクの高さが自動的に上方に調節されます。 これらすべてを実現するのは、デスクコントローラーに搭載されたインテリジェントテクノロジーです。
このテクノロジーは今後、さらに進化するでしょう。 ここで鍵となるのは「自己定量化」です。 ウェアラブルデバイスやスマートフォンを使い、歩数や消費カロリーなど、多くのデータが既に収集されています。 仕事中のこのようなデータ収集は、ますます浸透していくでしょう。 雇用者は、果物や飲み物を提供したり、ジムの会費を支払ったりするだけでは、従業員を満足させることはできません。 ワーカーが積極的に運動を取り入れ、座位・立位を繰り返しながら仕事し、そして「月間健康賞」などの様々なチャレンジに取り組めるようにし、健康的な行動を定量化できるようにすることが当たり前になるでしょう。 昇降デスクのインテリジェントテクノロジーは、その中の一部で、データを提供します。 昇降デスク向けアプリ が提供するこのデータをもとに、最終的には医療保険料を計算することもできるかもしれません。 そして、人間工学に基づき設計された健康的なワークプレイスで働くワーカーの保険料を節約することができるでしょう。 これはもちろん、個人情報取り扱いに関する議論が必要となりますが、最終的には、テクノロジーとそれがもたらすメリットの受容につながるでしょう。
アイデアは、もう膨らんでいます
LINAK が 2014年にヴッパータール大学(University of Wuppertal)と初めて共催した「Design Meets Movement」コンペティション では、いくつものエキサイティングなアイデアが提案されました。 若い学生たちが提案した未来のデスクから、 画期的なソリューションが誕生しました。 LINAK は2020年にこのコンペティションを再び開催しました。 その成果は実に素晴らしいものでした。 2021年夏に発表されたこれらのアイデアは、数年後にオフィス家具メーカーの製品として誕生することでしょう。
学生を対象に、LINAK が開催したしたコンペティション「Design Meets Movement」では、素晴らしい未来のデスクのアイデアが提案されました。
今後も、デスクがオフィスから消えることはありません。 私たちが働く場所、つまりホームオフィスでも同じです。 デスクの見た目が今とは異なることはあるかもしれません。たとえば、デスク自体を進化させ、エリア内の他の機能と融合させ、ネットワークとつなぎ、様々なサービスと連携するなどです。 まとめ: デスクは「絶滅品種」などではありません。
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この文章は、ドイツの出版社「Prima Vier Nehring Verlag」が発行する『OFFICE PIONEERS』シリーズで掲載されたものです。 このシリーズでは、100人以上の著者が、未来のオフィスについて展望を述べています。
Christoph Messing は LINAK のマネージングディレクターです。 彼は20年以上にわたりオフィス分野で働いてきました。